※「渡された手紙。」の続きです。
 ちょっと流血…?なので注意。
桜が眠った様子を確認し、
俺は静かに彼女の部屋を出た。

「緋邑さん…桜さん、寝たのです…?」

すると、小さな声で尋ねられる。
視線を動かすと、部屋の前に女の子…瑠梛が立っていた。

「ああ…。瑠梛、桜の傍に居てくれ…」
「ん…判りました…」

俺の言葉に小さく頷いて答えると
瑠梛は静かに桜の部屋に入ってポフッと狐変身し
ベット下に丸くなる。
俺はそれを見届けてから、静かにドアを閉めた。

「緋邑クン、行くの…?」
俺が玄関ホールへ行くと、
そこには志緒里が佇んでいた。

「…行かないと、また此処に乗り込まれるだろ」
「……うん、あの人なら来るだろうね…」

此処には、守るものが多すぎる…。
もしあの男に乗り込まれれば……
俺の大事な者をすべて傷つけていくだろう。

「でもさ…行ったら戻って来られないかも知れないんだよ?」
「……戻ってくるさ、桜や友人と約束した…」

約束はやぶれない…。
約束を破れば、また彼女は感情を消してしまうだろうから…。

「じゃあ、ボクも行く」
「は…?」
我侭を言う子供のように、志緒里が抱きついてきた。
「お前……相手は親父なんだぞ?お前はアイツのk」
「そうだよ。でも、ボクだって緋邑クンと一緒に居たいんだよ。だから、手伝うくらいしたいよ」
「……」

ここで来るなと言っても、聞くような奴じゃない。
どうせ後を付いてくるに決まっている。

「判った、けど争うわけじゃないから慎重n

ドンッ!

「「!?」」

俺が玄関のドアを開けようとしたその時
何かがドアにぶつかる鈍い音が響き、そして…

キィ…と外側からドアが開いた。

俺と志緒里は、反射的に身構えた。
アイツが…親父がココまで来たのだと思ったからだ。
しかし、そのドアを開けて入ってきたのは…

「なっ……栗花落…!?」

全身血まみれになった栗花落だった。


*  *  *  *  *


ポタポタと鮮血をホールの床に落としながら
栗花落がドアを支えに立っていた。

「あはは……夜遅くに…ごめんね、ひーお兄ちゃん…♪」

いつもの調子で話しかけようと笑う栗花落だが、
まったくその声に力はなかった。

「…お前、なにして……」
「ん…?だって、目障りな人が居たから……」

普段の、冗談か本気か判らない台詞を吐く栗花落。

「お前……まさか…」

なくなったと思った手紙を持っていったのは、こいつか…。
そして…親父に会いにいって……
こんな……。

「ごめんね…やっぱまだ力足りなかったや…。逃がしちゃった」
「それより栗花落クン、ケガの手当しないと…」
「あ、うーん…それよりお風呂と着替えかも…?」

フラフラとしながら、いつもの調子を崩さない栗花落。
志緒里は特に問いただしもせず、お風呂を沸かしに行く。

俺が無茶するよりも先に(いや無茶する気はなかったが
この小さいお子様は、思いっきり無茶してきたらしい。
まったく……。

俺は、栗花落に近づいて「……血は?」と尋ねた。
栗花落は俺を見上げ、驚いた顔を一瞬した後に
いつもの笑顔に戻る。

「えへへ、ちょっと足りないー♪」
「……はぁ」

俺は小さくため息をついた後
片腕の袖を捲り、栗花落の前に差し出した。


*  *  *  *  *
あとがき。

…あれ、結局お父さんに会いにいってないや。
このあと緋邑たちは、玄関前のお掃除です。
だって、血がドボドボだし(ぁ
あ、栗花落の血は半分くらい返り血です(何